不登校

不登校になる理由・原因は?文部科学省調査のランキングを元当事者・元研究者が解説します

不登校の理由・要因
yuki-yoshida

お子さまが学校に行けなくなってしまったとき、一番気になるのは「学校に行けなくなった理由や原因」だと思います。 

理由がわからないと不安になりますし、どう対処して良いかわからず余計に混乱してしまいますよね。

 そこで今回は、不登校の要因に関する文部科学省の調査結果を、ランキング形式でまとめてみました。

不登校経験者としての立場から、そして、大学院で不登校を研究していた元研究者としての立場からの両面で、私なりに思うことも紹介させていただきます。 

お子さまの不登校で悩まれている方や、不登校のお子さまを支援されている方は、ぜひご一読ください。

不登校の要因ランキング

それでは早速、不登校の要因について掘り下げていきましょう。

以下の表は、令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果 をもとに、小中学生の子どもが不登校になる要因をランキング形式でまとめたものです。

第1位無気力・不安51.8%
第2位生活リズムの乱れ、あそび、非行11.4%
第3位いじめを除く友人関係をめぐる問題9.2%
第4位親子の関わり方7.4%
第5位該当なし5.0%
第6位学業の不振4.9%
第7位入学、転編入学、進級時の不適応3.1%
第8位家庭の生活環境の急激な変化2.6%
第9位家庭内の不和1.6%
第10位教職員との関係をめぐる問題1.2%
第11位進路にかかる不安0.7%
学校のきまり等をめぐる問題
第13位クラブ活動、部活動等への不適応0.3%
第14位いじめ0.2%
不登校の要因ランキング
(引用:文部科学省「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果 

こちらの調査は、全国の小中学校を対象におこなわれたもので、該当する項目にチェックをつける形式で集計されたようです。

次項からは、個人的に気になった点を述べていきます。

いじめが最下位なのはなぜ?

私がまず気になったのは、不登校の要因として一番考えられがちな「いじめ」が最下位だったことです。

今回の調査では、0.2%というかなり低い数値となりました。

一番考えられる理由は、「この調査は不登校当事者本人ではなく、学校を対象におこなわれたものである」という事実です。

つまり、学校側がいじめの数を正しく認識できていない可能性があるため、このような低い数値になっているのでは?というわけです。

おそらく、不登校の子どもを対象に同様の調査をおこなうと、「いじめ」の割合はかなり増えると思います。

(「いじめ」については、「教職員との関係をめぐる問題」の項目でも少しだけ触れています。)

家庭に関わる要因について

今回の調査では、家庭に関わる要因が以下の3つあり、すべてを合計すると11.6%という結果になりました。

  • 親子の関わり方(過干渉、不干渉など)……7.4%
  • 家庭の生活環境の急激な変化(両親の離婚、別居、リストラなど)……2.6%
  • 家庭内の不和(両親間や兄弟間の不仲など)……1.6%

一番リラックスできるはずの家庭に居心地の悪さを感じてしまうと、子どもは膨大なストレスを抱えます。

そのストレスが「不登校」という形で顕在化してしまうことは、不登校のよくある要因のひとつです。

また、このような家庭環境の変化やストレスが、第2位の非行やあそびにつながる場合も多いです。

子どもの笑顔を守るために、できるだけ安心して過ごせる環境づくりを心がけたいですね。

教職員との関係をめぐる問題

第10位は「教職員との関係をめぐる問題」で、1.2%でした。

この結果を最初に見た私の感想は以下です。

ぜったい嘘やろ!!!

いじめの章でも述べた通り、この調査は学校を対象におこなわれたものです。

そのため、学校側(教員)が「自分との関係が原因で子どもが不登校になっている」ということに気づかずに、別の項目にチェックを入れている可能性もあるということです。

(言い方は悪いですが、もしかしたら、その事実を公表したくなくて隠している場合もあるかもしれません。)

上記の内容は、個人的な主観だけで述べているものではありません。

それは、「子どもの発達科学研究所」という公益社団法人がおこなった調査※①で、実際に教職員と不登校の子ども・保護者の間には大きな認識の違いがあることがわかってるからです。

こちらの調査によると、不登校経験者の子どもは、教師との関係について以下のように回答しています。

  • 先生と合わなかった……35.9%
  • 先生から厳しく怒られた・体罰があった……16.2%

文部科学省の正式な調査とは、大きな差があることがわかりますよね。

ちなみにこの差は「いじめ」に関する項目も同様で、不登校当事者の子どもの26.2%が「いじめ被害があった」と回答しています。

やはり、不登校は子どもの問題なので、子どもを対象に調査しないと意味がないと思います。

文部科学省の調査を否定するわけではありませんが、学校側に調査しただけで完結してしまうと、本当の不登校は見えてこないのではないでしょうか。

※①:令和5年の7~8月に一部地域でおこなわれた、文部科学省からの委託調査。文部科学省の調査は回答者が教師のみだったが、こちらの調査は教師だけでなく、子どもや保護者(不登校経験がない者も含む)も回答している。

無気力・不安の正体

1位の「無気力、不安」は51.8%で、半数を占めていました。

この結果を見て「やっぱり不登校は甘えじゃん~」と思う方も多そうですが、それは絶対に違います。

無気力になったり、不安を抱いたりすることには、必ず何かしらの理由があるはずです。

しかし、「なぜ無気力になるのか」「どうして不安を抱いてしまうのか」ということを、10代そこそこの子どもが自分の言葉で説明するのはとても難しいです。

それゆえ学校側が、「理由はよくわからないけど、やる気がなくて不安がちな不登校の子どもがいる」という認識をし、このような結果が生まれているのだと推測します。

私も、不登校当時は自分の気持ちをうまく言語化できず、ただ漠然とした無気力感や不安感を抱いていました。

以下の記事では、私自身の不登校経験を語っていますが、記事に書いてあることをしっかり言語化できるようになったのは、大学に入ってからです。

そのくらい、子どもが自身の感情を言葉にするのはとても難しいことなのです。

今回の調査で「無気力・不安」に分類された子どもも、もう少し時が経てば、自身の不登校経験を上手に言語化できる日が来るのではないかな、と思っています。

あくまでもひとつの調査

この調査を考える上で一番重要な点は、「調査の対象が不登校当事者ではない」というところだと思います。

繰り返しになりますが、こちらの調査は学校を対象におこなわれたものであり、不登校の子どもや保護者に対しておこなわれたものではありません。

そのため「この調査が不登校のすべて」と思うのではなくて、「あくまでもひとつの参考資料」として捉える必要があると考えています。

正直なところ、学校側が子どもの不登校を100%正しく認識できているとは思えません。

「子どもの発達科学研究所」の調査からも明らかになったように、学校側(教師)と当事者側(子どもや保護者)の間で、知らず知らずのうちに認識の違いが生まれていることもたくさんあると思います。

それだけでなく、「家庭内では不登校の原因がわかっているけれど、それを学校には伝えていない」というパターンもあるはずです。

この調査結果に左右されすぎず、お子さまの声にしっかりと耳を傾けながら“それぞれの不登校”を考えていくことが大切と言えるでしょう。

 まとめ 

本記事では、文部科学省の不登校の要因に関する調査結果と、元当事者・元研究者の立場から見た知見を紹介させていただきました。

学校に行けなくなる理由や要因は、子どもによってさまざまです。

しかし、どんな原因であれ、そして原因がわからない場合であれ、苦しさもどかしさを抱えているのは同じです。 

学校に行けないことを否定したり、批判したりせず、子どもが笑顔で過ごせるように温かく見守っていきたいですね。

ABOUT ME
ゆき
ゆき
生きづらさマイスター
1996年生まれ。佛教大学大学院・社会学専攻社会学研究科(修士課程)修了。 自身のさまざまな生きづらさ体験をもとに、当事者目線からの情報発信や支援活動をおこなっています。
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