新幹線の多目的室はパニック障害でも利用できる?予約方法から当日の流れまで徹底解説

新幹線はとても便利な乗り物ですが、人が多くて逃げ場がありません。
そのため、10代の頃からパニック障害を患っている私にとってはハードルが高い乗り物でした。
しかし先日、思い切って「多目的室」を使ってみたら――想像以上にスムーズに、安心して新幹線を利用することができました!
この記事では、実際に京都〜東京間の「のぞみ」で多目的室を使った体験談をもとに、多目的室の予約方法や当日の流れを紹介します。
実際に利用した際の切符の受け取り方法や、障害者手帳による割引も綴っています。
パニック障害持ちで新幹線を利用される方は、ぜひ参考にしてみてください!

当記事は、2025年の8月に同伴者あり(家族)で利用した際の体験記です。
予約方法や詳細情報は、今後変更になる可能性もありますのでご了承ください。
新幹線の「多目的室」ってどんな場所?

まずは、新幹線の多目的室の概要や、実際の内装などをご紹介します。
新幹線の多目的室とは?
新幹線の多目的室は、からだの不自由な方(車いす利用などで歩行が困難な方)のための小さな個室です。
基本は予約制で、からだの不自由な方が最優先ですが、予約者がいない場合は授乳・おむつ替え、体調不良の方なども使うことができます。
今回私が利用した「のぞみ」はもちろん「ひかり」や「こだま」にも設置されているので、さまざまな区間で利用が可能です!

私が多目的室を知ったきっかけ
私は京都在住ですがディズニーが大好きで、小さな頃からよく新幹線を利用してパークへ遊びに行っています。
しかし、パニック障害があり、長時間の移動や人が多い空間が苦手な私にとって、“新幹線移動”はとても不安が大きいです。
これまでは、人が少ないグリーン車を利用することで、何とか東京まで移動できていました。
しかし、この数か月で病状が劇的に悪化したため「もうディズニーには行けないかも……」と思い悩んでいました。

こんな私でも、安心して新幹線に乗れる方法ってあるのかな……?
それでネットをいろいろと調べていたところ、多目的室に辿り着きました。
しかし、精神障害者の方が多目的室を利用した情報は、私が見る限りではひとつもありませんでした。
そのため、私でも利用できるのかどうかはわからなかったのですが、勇気を出して予約し、今回の利用に至りました!
多目的室の様子
それでは早速、私が実際に利用した際に撮影した写真とともに、多目的室の様子を紹介していきましょう!

こちらが多目的室です。通路の片隅にひっそりと存在しているので、ぱっと見は何の部屋かわからないです。
今回私が利用した「のぞみ」は16両編成だったので、11号車と12号車の間にありましたが、8両編成の新幹線だと7号車付近にあるようです。

中はこんな感じです。実際は、写真で見るよりコンパクトな広さです。
からだの不自由な方向けに作られた部屋なので、手すりが数か所設置されています。

座席は2名分あり、指定席や自由席と同じシートが使われています。

座席を倒してベッドにすることもできるので、必要に応じて横になることも可能です。

ちなみに、通常の指定席のような感じの「リクライニング」はできませんのでご注意を。

座席の右下には、連絡用ブザーとコンセントがあります。
乗務員の方にお手伝いを頼みたい時は、こちらのブザーを押すと来てもらえるようです。

座席からの景色はこんな感じです。
座席とは別に折り畳み椅子もあるので、介助者の方はこの椅子に座ることもできます。
(本来は、私がスーツケースを固定しているところに椅子が固定されています)

多目的室は内側から鍵をかけられるため、知らない人が入ってくる心配はありません。

お手洗いなどで外に出る時は、先ほどの鍵を解除した後に、鏡の横にある「自動開閉ボタン」を押すとドアが開きます。
利用予約の流れ(電話の場合)

多目的室の予約方法は、以下の3種類です。
- 駅に行って「みどりの窓口」で予約する
- WEBで予約する(一部の区間のみ)
- 「おからだの不自由なお客様のサポートダイヤル」に電話して予約する
いろいろな情報を調べてみると、みどりの窓口での予約は、状況によってはかなりの待ち時間が発生するようでした。
そのため私は「おからだの不自由なお客様のサポートダイヤル(0570-00-8989)」に電話して予約をおこないました!
この章では、電話予約の際の手順について体験談をもとに紹介します。

WEB予約は、ごく限られた区間しか対応していないようで、私が利用した「京都~東京」は対象外でした。
予約希望の電話をする
「おからだの不自由なお客様のサポートダイヤル(0570-00-8989)」に電話すると、以下の内容を聞かれました。
- 乗りたい新幹線の区間
- 希望日・希望の列車時間(第2希望まで聞いてもらえます)
- 利用の目的
- 同伴者や車いすの有無
- 乗務員のサポートが必要かどうか
- 切符を受け取りたい駅(最寄り駅でOK)
希望の列車時間を言う時は、
「京都〇時〇分発、のぞみ××号です」
という感じで、なるべく詳しく言うとスムーズに対応してもらえると思います。
ただし、希望の列車で多目的室が使えるかどうかは、各鉄道会社が調べて判断をするそうです。
そのため、予約が確定するまでは少し時間がかかるとのことで、折り返し電話をもらうことになりました。
ちなみに、予約確定の電話は、非通知でかかってくる場合が多いそうです(理由はわかりません)。
非通知からの電話を拒否にしている場合は、その設定を解除するか、番号を通知して電話してもらうように伝えておくのがおすすめです。

私のスマホも非通知は着信オフにしているので、番号を通知して電話してもらうようにお伝えしました。
精神障害(パニック障害)でも予約OK
【私が多目的室を知ったきっかけ】の項目にも書いたのですが、私が調べた時点(2025年8月)では、精神障害者が多目的室を利用した情報は一切出てきませんでした。
そのため、パニック障害でも利用できるのかが不安だったので、電話の最初にこのように伝えました。

パニック障害があって発作を起こす可能性があるため、個室がある多目的室を利用したいのですが、
精神障害者でも利用はできますか?
すると、電話口のオペレーターさんは、このようなことをお話してくれました。

利用可能かどうかは、各鉄道会社の判断になります。
オペレーターさんによると「多目的室を利用できる・できない」を振り分ける明確なルールはないそうで、利用目的を聞いた各鉄道会社がその都度判断をしているらしいです。
利用目的の内容にかかわらず、予約希望はすべて受付するけれど、それが通るかどうかは各鉄道会社の判断による
という感じでした。そのため、パニック障害以外の精神障害でも利用できる可能性はゼロではなさそうです。
ちなみに私は、障害者手帳の有無や等級なども詳しく聞かれたので、もし手帳を持っている方は、手元に置いた状態で電話するのが良いかもしれません。
予約確定の電話を受け取る
おからだの不自由なお客様のサポートダイヤルに電話をした日の夜、第1希望で予約が確定した旨の電話がかかってきました!

電話は、切符受け取り希望の駅(最寄り駅)からかかってきました。
精神障害でも利用できるかがすごく不安だったので、無事に利用許可が下りてとても嬉しかったです。
参考までに、サポートダイヤルに予約希望の電話をした時間と、最寄駅から予約確定の電話がかかってきた時間を記しておきます。
- 予約希望の電話……14時頃
- 予約確定の電話……19時半頃
おそらく、夕方までにサポートダイヤルに電話をすれば、当日中に予約確定の電話をもらえる可能性が高いのではないかと思います。
切符の受け取り方法

多目的室の予約が確定したら、駅に行って切符を受け取りましょう!
以下からは、切符受け取りの際の手順について体験談をもとに紹介します。
駅員さんに声をかける
駅に到着したら、まず駅員さんに声をかけます。

予約確定の電話をもらった時に「明日の〇時頃に行きます」と伝えていたので、すぐに対応してもらえました!
すると、駅員さんは改札外まで出てきてくれて「みどりの発券機プラス」を操作し、切符の購入手続きを始めました。
新幹線の切符や定期券などが買える切符売り場です。みどりのカラーが目印です。
買い方がわからない場合や、多目的室利用などの特殊な事情がある場合は、オペレーターさんが遠隔で対応してくれます。


私はてっきり、駅員さんが切符を手配してくれるのだと思っていましたが、多目的室を利用する時は発券機で手続きをするみたいです。
駅員さんに「みどりの発券機プラス」を操作してもらう
発券機の操作やオペレーターさんの対応は、すべて駅員さんがやってくれました。
そのため、私がやったことは以下の3つだけです。駅員さんが隣で一緒に確認してくれたので安心でした!
- 乗車日時や号車・区間などの確認
- 障害者手帳の提示
- 料金の支払い(クレジットカードもOKでした!)
ただし、発券のタイミングによっては、オペレーターさんにつながるまで若干の待ち時間が発生する場合もあるようです。

私が行った時はタイミングが悪かったらしく、20組以上の順番待ちがあり、オペレーターさんにつながるまで10分ほどかかりました……。
切符受け取りの際は、なるべく急ぎの用事がない時に行くほうが安心かもしれません。
座席番号が書かれた切符を受け取る
最後に、特急券の切符に「多目的室利用」の号車(11)と座席番号(14)を駅員さんが手書きで書いてくれました!

ちなみに、この写真には特急券しか写っていませんが、新幹線の切符は「特急券」と「乗車券」の2枚1組です。
乗車券は特急券と一緒にもらえるので、乗車当日は2枚とも忘れずに持参しましょう。
ということで、特急券と乗車券を無事に受け取ったら、手続き完了です!

受け取り作業にかかった時間は、オペレーターさんの待ち時間含めて20分弱くらいだったと思います。
本人が行けない場合、代理購入も可能!
私は今回、自分で駅に足を運び、切符を受け取ることができました。
しかし、体調の都合などで本人が駅まで行けない場合は、代理の方の受け取り・購入も可能だそうです!
- 本人の障害者手帳
- 切符の代金(クレジットカードOK)
- 予約確定時に電話で伝えられる4桁の数字(メモして行くのがおすすめです)
この3つがあれば大丈夫みたいなので、もし代理の方が切符を受け取る場合は、予約確定の電話の時にその旨を伝えてみてくださいね。

地域によって異なる可能性もあるので、詳しい情報については、実際に切符を受け取る駅でお聞きするのが一番だと思います!
切符の割引(旅客運賃割引制度)

「多目的室を利用する時、障害者手帳を持っていたら切符を安く買うことはできる?」
――できます!手帳の提示で、本人や同伴者の乗車券が半額になります。
この章では、多目的室を利用する際の障害者手帳の割引制度について、私の体験談をもとに紹介します。
精神障害者手帳の割引が使える!
精神障害者保健福祉手帳を持っていると、多目的室利用時の乗車券が割引になります。
これまでは身体・知的障害の方のみ対象でしたが、2025年4月からは精神障害も割引対象になりました!
この割引制度は、正式には「旅客運賃割引制度」という名称で、第1種と第2種があります。
- 第1種……精神障害者手帳の1級所持者
- 第2種……精神障害者手帳の2級・3級所持者
第1種の方は本人と介護者1名の乗車券が半額、第2種の方は本人のみ乗車券が半額になります。
駅で切符を受け取る際に手帳を提示するだけでOKなので、私も利用させていただきました!
ただし、どちらも特急券は割引対象外となりますのでご注意ください。

私は3級の手帳(第2種)なので、私の乗車券のみ半額で購入できました。
割引には「旅客運賃減額」の記載が必要
「旅客運賃割引制度」を使う際、気をつけなければいけないことがあります。
それは障害者手帳に「旅客運賃減額 第一種(または第二種)」という記載がないと、割引を使えないということです。

精神障害者の旅客運賃割引は2025年4月に始まったものなので、それ以降に手帳が交付された方は問題ないと思います。
しかし、2025年4月よりも前に交付された手帳を持っている場合は、その記載がないはずです。
そのため、2025年4月よりも前に交付された手帳を持っている方で割引を受けたい方は、市町村窓口に行って対応してもらう必要があります。

かく言う私も、2024年に更新した手帳を使っていたので、切符受け取り前に市役所に行って、上記の写真のようにハンコを押してもらいました。
市役所などの窓口は、平日しか空いていない地域がほとんどです。
そのため、もし「旅客運賃減額 第一種(第二種)」の記載がない手帳を持っている場合は、余裕をもった行動を心掛けることがおすすめです。
乗車当日の流れ

無事に多目的室の予約や切符の購入ができたら、最後に気になるのは「乗車当日の流れ」だと思います。
この章では、乗車駅に到着してから降車駅で降りるまでの流れについて、体験談をもとに紹介します。
改札は通らず、駅員さんに声かけを!
多目的室を利用する場合、乗車駅では改札を通りません。

切符受け取り時に「改札を通らず駅員に声をかけてね」という案内がありました。
そのため、改札付近の駅員さんに「多目的室利用です」と声をかけました。
私が利用した時は、駅員さんが以下のことをおこなってくれました。
- 障害者手帳の確認
- 乗務員さんのサポートが必要かどうかの確認
- 乗車する新幹線への連絡
駅員さんとやりとりする時間は、ほんの1~2分程度です。
しかし、ほかの乗客の対応中だったり、改札が混雑していたりすると、予定より時間がかかってしまう可能性も考えられます。
当然ながら新幹線は待ってくれないので、なるべく余裕を持って乗車駅に行きましょう!

車内では乗務員さんが待ってくれている
そのままホームに行って新幹線に乗ると、多目的室の前で乗務員さんが待ってくれていました。
私は初めての利用だったので、ドアの開閉方法や連絡ブザーの場所などを詳しく教えてもらいました。
乗務員さんとのやりとりはこの時だけで、その後は自由に過ごせます。
乗るまでは少し緊張しましたが、駅員さんや乗務員さんが優しく対応してくれて安心でした!

私は初利用だったためか、東京駅で降りる時は乗務員さんがお見送りしてくれて嬉しかったです。
多目的室を利用してみた感想

多目的室を利用した感想・気づいたことを3つにまとめました!
個室なので、穏やかに過ごせた!
1つ目は、個室ならではの安心感で、穏やかに過ごせたことです。
私はパニック障害以外にもHSPや社交不安障害の症状もあるため「他人の存在」にとても敏感です。
そのため、普通の指定席やグリーン車だと、
- 発作を起こして周りに迷惑をかけたらどうしよう
- 過呼吸になって変な目で見られるのが怖い
という不安や緊張が強く、たとえ発作が出なくても心身がすり減ってしまいます。
しかし、多目的室は個室なので、同じ空間にいるのは付き添いの家族だけです。
そのおかげで、他人の視線や物音などの刺激を最小限に抑えた状態で目的地(東京)まで行くことができました!

「誰にも気を遣わなくていい」という安心感があったためか、グリーン車の時と心身の疲労度が全然違ってびっくりしました。
「身障者用お手洗い」と間違える人がいた
多目的室はとても安心できる空間でしたが、実際に使ってみて気になったこともありました。
それは、多目的室の周りをうろうろする乗客が数名いたことです。
おそらく「身障者用トイレ」と勘違いしている方だと思うのですが、扉を開けようとされる方もいました。
多目的室は内側から鍵をかけられるので、ほかの乗客が多目的室に入っていくる心配はありません。
しかし、外の気配や物音に敏感な私にとっては、少ししんどかったです。

多目的室の存在を知らない方もいるでしょうし、仕方がないことだとは思いますが、ちょっとだけストレスでした。
外に出るタイミングが難しい
もうひとつ気になったことは、外に出るタイミングが難しいことです。
多目的室は通路の一角にあるので、すぐ側で休憩している人や、近くにあるお手洗いを待つ人も多いです。
そのため、お手洗いに行くために扉を開けた時に、他の乗客と目が合って少し気まずく感じました。
相手は全然気にしていなかったかもしれませんし、何かを言われたわけでもありません。
しかし、そのことがちょっとトラウマとなり、東京駅で降りる時は少し早めに多目的室を出て、ほかの乗客に紛れて降車しました。
もしお手洗いなどで外に出たい場合、タイミングを見計らったほうが良さそうです。

お手洗いから戻る時もほかの乗客に見られるのが嫌で、周囲に誰もいなくなったのを確認してから戻りました……。
まとめ|パニック障害でも旅行はできる!

本記事では、パニック障害持ちの私が新幹線で多目的室を利用した体験談をもとに、予約方法や当日の流れについてまとめました!
多目的室を使う前は、正直「自分が使ってもいいのかな……」と不安でいっぱいでした。
しかし、実際に利用してみてわかったのは、
多目的室は、障害の有無や種類に関係なく、困っている人が安心して移動できるように作られた場所
だということです。
そのことを知れたおかげで、不安が強かった新幹線の旅も、より穏やかに楽しめるようになりました!
もし同じように不安を感じている方がいたら、必要に応じて多目的室を頼ってみてください。
新たな挑戦が、あなたの大きな一歩となるかもしれません……!
