精神疾患

精神障害者保健福祉手帳とは?申請・更新の手続き方法や手帳のメリット・デメリットを手帳所持者(3級)が解説します

yuki-yoshida

84万人以上の方が所持している※①精神障害者保健福祉手帳。

精神疾患を抱える私たちにとってはとても大切な手帳ですが、その実態を知らない方も多いはず。

そこで本記事では、精神障害者保健福祉手帳の基本情報を徹底的にまとめてみました。

申請や更新手続きの方法はもちろん、手帳を持つメリット・デメリットなども、自身の体験談をもとに紹介しています。

障害者手帳のことを詳しく知りたい方は、ぜひご一読ください。

※①:厚生労働省「『平成 28 年 生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査』の結果を公表します」(2019)より。

基本情報

この章では、手帳の等級や取得条件、受けられるサービスなどのの基本情報を紹介します。

これから手帳を取得する方や、取得を検討している方の参考になれば幸いです。

精神障害者保健福祉手帳とは

精神障害者保健福祉手帳をひとことで言うと「あなたには精神障害がありますよ」ということを認定する手帳です。

精神障害を持つ方の自立と社会参加を目的に作られたもので「精神障害者手帳」と略されることが多いです。

手帳を取得できるのは、以下の条件に当てはまる方です。

精神障害者手帳を取得できる方
  • うつ病、統合失調症、薬物依存症、てんかん、器質性精神障害、発達障害精神障害、その他の精神疾患を抱えている方
  • 障害や病気の影響で、長期にわたって日常生活や社会生活に制約がある方
  • 初診から6か月以上が経過している方

なお、精神障害と知的障害の両方をお持ちの方は、障害者手帳とともに療育手帳※②を取得することが可能です。

詳しくは、お住いの市町村の窓口に問い合わせてみてください。

※②:知的障害がある方が申請できる手帳。

等級

精神障害者保健福祉手帳は、1級から3級まで3種類の等級があります。

厚生労働省の公式サイトでは、等級について、以下のような判断基準が設けられています。

1級精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不要ならしめる程度のもの
2級精神障害であって、日常生活に著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準」

上記の判断基準をわかりやすく解釈し直したものが、以下の“ポイント”です。

障害者手帳 等級のポイント
  • 1級:周囲のサポートがないと生活できない
  • 2級:周囲のサポートがなくても生活できるが、場合によっては難しい
  • 3級:周囲のサポートは必要最低限でOK

あくまでも個人的な見解ですが「日常生活を送るにあたり、どの程度周囲のサポートが必要なのか」を基準に決められている感じがします。

ちなみに私は、周囲のサポートは必要最低限で大丈夫なので、3級の手帳を所持しています。

主なサービス・サポート

手帳を取得すると、さまざまなサービスやサポートを受けることができます。

主なサービス・サポート
  • 所得税や住民税の控除
  • NHK受信料の減免
  • 公共施設やレジャー施設の入場料金の割引
  • 鉄道、バス、タクシー、飛行機などの運賃の割引
  • 携帯料金の割引
  • 障害者職場適応訓練の実施
  • 公営住宅の優先入居

等級や住んでいる地域によって少し変わる部分もありますが、だいたいはこんな感じです。

手帳を取得すると、自身の等級や地域で受けられるサポートがまとめられた用紙をいただくことができます。

詳しいサポート内容等は、そちらをチェックしていただくのが一番確実かと思います。

申請・更新手続き

この章では、精神障害者保健福祉手帳の申請・更新手続きについてまとめてみました。

「申請・更新をしたらいつ自宅に届くのか?」という多くの方が抱く疑問についても、自身の体験談をもとに紹介しています!

申請手続きの方法

手帳を申請する場合は、以下の書類を市町村の窓口に提出する必要があります。

申請に必要なもの
  • 申請書
  • 医師の診断書/障害年金の証書の写し
  • 本人の写真(縦cm×横3cm)
  • マイナンバーカード(不要な場合もあり)

申請書は市町村の窓口でいただくことができますし、市町村によっては、市役所等のHPからダウンロードできる場合もあります。

診断書は、主治医の先生に相談すると、ほぼ必ず書いてくださるはずです。

ただし、完成までに1か月近くかかる場合が多いので、余裕をもって書いていただくようにしましょう。

ちなみに、障害年金を受給されている方は、診断書の代わりに証書の写しで申請をおこなうこともできますよ。

なお、本人による提出が難しい場合は、代理での提出や郵送での提出が可能な市町村もあるようです。

気になる方は、お住いの市町村へ問い合わせてみてくださいね。

更新手続きの方法

手帳の有効期限は「交付日から2年が経過する日の月末」です。そのため、2年に1回の頻度で更新手続きをおこなう必要があります。

提出書類や手続きの方法は申請の時と同じなのですが、注意しなければいけない点が2つあります。

更新手続きの注意点
  • 更新通知が来ないこと
  • 手続きのタイミングによっては、新しい手帳が届く前に有効期限が切れてしまうこと

手帳の期限が切れてしまうと、新しい手帳が届くまでサービス・サポートを受けることができません。

更新手続きは期限が切れる3か月前から可能です。もし更新を希望する場合は、早めに手続きをおこなうようにしましょう!

自立支援医療受給者証との同時申請

精神障害者手帳は、自立支援医療受給者証※③との同時申請や同時更新が可能です。

手帳を申請する方のほとんどは自立支援医療を利用している方だと思うので、同時に申請・更新ができるのはとてもありがたいですね。

手帳と自立支援医療を同時に申請・更新する場合、手帳用の診断書のみで手続きができます。

詳しい手続き方法は、各市町村の窓口へ問い合わせてみてくださいね。

※③:指定した医療機関や薬局の医療費が1割負担になる手帳のようなもの。申請には、医師の診断書や申請書等の書類が必要です。

いつ頃届くのか?

精神障害者手帳は、申請・更新手続きをおこなってから手元に届くまで約2か月ほどかかると言われています。

参考までに、私自身の申請・更新の流れを紹介します。

  • 2022年3月上旬に申請手続き⇒5月上旬に自宅へ到着
  • 2024年2月下旬に更新手続き⇒4月下旬に自宅へ到着

どちらも自立支援医療との同時申請・更新でしたが、やはり、手元に届くまでちょうど2か月かかりました。

申請・更新をおこなう場合は、なるべく時間に余裕をもって手続きした方が良さそうですね。

手帳を持つメリット

障害者手帳を申請する時、一番気になるのは「手帳を持つことでどのようなメリットが生まれるのか?」だと思います。

この章では、障害者手帳所持歴3年の私が「手帳を持っていて良かった!」と感じたことを4つ紹介します。

︎公共施設などの料金が割引になる

手帳を持って一番「有難み」を感じるのは、さまざまな施設の利用料が割引になることです。

テーマパーク、植物園、水族館、美術館、博物館、映画館、お寺など……。

私は障害年金とわずかな収入で日々を過ごすのが精いっぱいなので、このような割引はとてもありがたいです。

ほとんどの施設は同行者(1名まで)も割引になるので「外出には付き添いが必須」という方でも安心して利用できます。

障害者手帳で行こう!~全国版~」というサイト では、手帳割引が適用される施設が都道府県ごとに詳しく掲載されています。気になる方はぜひチェックしてみてください。

︎乗り物に割引価格で乗れる 

手帳を持っていると、電車やバス、飛行機、タクシーなどの乗り物に特別料金で乗ることができます。

また「もし乗車時に体調が悪くなっても、手帳を見せれば対応してもらいやすい」という利点もあります。

しかし、すべての乗り物に割引が適用されるわけではありません。

割引が適用されない鉄道会社やタクシー会社もあるので、手帳を使って外出をする際は事前確認を忘れないようにしてくださいね。

︎スマホ料金が割引になる 

ドコモ、au、ソフトバンクの各種スマートフォンを所持している場合、障害者手帳を所持している方向けの割引サービスを受けることができます。

サービスの内容は携帯会社によって異なりますが、毎月の基本使用料や各種サービス使用料が割引になることが多いようです。

私はauを利用していますが、ショップでの申し込みに加えて郵送での申し込みもできるので、外出が難しい場合も安心です。

「サービスを利用してみたい!」という方は、各携帯会社の公式サイトを確認してみてくださいね。

︎障害者雇用や就労支援事業所を利用しやすい

障害者雇用や就労支援事業所を利用したい場合は、手帳を持っていた方が圧倒的に有利です。

それは、手帳がないと応募できない求人や、利用できない事業所があるからです。

特に障害者雇用の求人は「障害者手帳を持っていること」という応募条件を設けている企業も少なくありません。

私が過去に利用していた就労支援事業所も「精神障害者手帳を持っている人」という利用条件が設けられていました。

求職している方や、事業所の利用を検討している方は、手帳ひとつ持っておくだけで選択肢の幅が広がります。

手帳を持つデメリット 

この章では、精神障害者手帳所持歴3年の私が感じる「手帳を持つデメリット」について紹介します。

「デメリット」というよりも「手帳を所持する際に覚悟しておいた方がいいこと」という意味合いが強いかもしれません。

︎人に見せる時に勇気がいる 

1つ目のデメリットは「人に見せる時に勇気がいる」ということです。

手帳割引を利用する場合、施設の受付の方やタクシーの運転手さんなどに手帳を見せなければいけません。

その時についつい相手の顔色が気になってしまい、恐る恐る手帳を出す癖が未だに抜けません。

今まで一度も嫌な顔をされたことはないのですが、それでもやっぱり、毎回ちょっと勇気がいる行為だなあと思います。

︎申請・更新手続きが大変

2つ目のデメリットは、申請や更新手続きが大変なことです。

何枚もの書類を手配し、記入し、主治医の先生に診断書を書いてもらった上で、市役所に提出する……。

その行為は、精神病患者にとってものすごく負担がかかります。

私も二度の申請・更新手続きを経験しましたが、ものすごく手間と時間がかかって疲れました。

「今すぐに手続きするのはしんどい」「ちゃんとできる自信がない」という方は、ある程度症状が落ち着いてからでも良いと思います。  

まとめ

本記事では、精神障害者保健福祉手帳の基本情報や申請・更新方法、手帳を持つメリットやデメリットについて、体験談をもとにまとめてみました。

手続きはとても大変ですが、生活に必要なさまざまなサービスを受けられるので、私は「手帳を取得して良かった」と心から思っています。

しかし、精神障害者手帳の存在は、まだあまり世の中に知られていないように思います。

もっと多くの方に手帳の存在を知ってもらい、精神障害を抱える方が少しでも過ごしやすい世の中になることを願っています。

ABOUT ME
ゆき
ゆき
生きづらさマイスター
1996年生まれ。佛教大学大学院・社会学専攻社会学研究科(修士課程)修了。自身のさまざまな生きづらさ体験をもとに、ブログやSNSの発信活動や講演活動などをおこなっています。
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