なぜ「ひきこもり」になるのか?ー原因やメカニズム、外に出られない理由について、経験者の視点から紐解きます
「ひきこもりになる原因は何ですか?」
その答えを一つに絞ることは、とても難しいと思います。
ひきこもりは、本人の甘えや怠けではなく、さまざまなストレスが積み重なった結果として起こること多いです。
そのため、表面的な行動だけを見ていると、当事者の“本当の苦しさ”に気づけないことも少なくありません。
そこで本記事では、ひきこもりになってしまう原因や背景について、経験者の視点からまとめてみました。
記事の後半では、10代半ばから20代後半までの期間でひきこもりを経験した私の「外に出ることができなかった理由」についても紹介しています。
ご家族のひきこもりで悩まれている方や、ひきこもり支援されている方は、ぜひご一読ください。
- ひきこもり当事者が何を考えているか知りたい
- ひきこもりになる理由が気になる
- ひきこもり経験者の体験談を参考にしたい
ひきこもりになる原因・背景

はじめに、ひきこもり経験者の視点から「ひきこもりになってしまう原因・背景」について考えてみたいと思います。
あくまでも一経験者の見解となりますが、ひきこもり当事者の心境を理解する一助となれば幸いです。
ひきこもりになる=ストレスがある
私は、ひきこもり状態になる大きな要因のひとつは、日常生活の中で何らかのストレスを抱えていることだと考えています。
- 学校や職場での生活、人間関係
- 家庭環境や家族との関係
- 地域とのつながり
- 学業や仕事、将来への不安
- HSP、発達障害などの特性
ひきこもり状態にある方の多くは、さまざまな要素の中で「何かしらの心の違和感や苦しさ」を抱えています。
心の中に少しずつ積み重なったストレスは、まるでコップの水があふれるように、いつしか限界を迎えます。
そのようにしてコップの水があふれ「もう限界だ」と知らせるサインのひとつが「ひきこもり」という状態なのだと思います。

原因に思える出来事は“きっかけ”にすぎない
- 職場でトラブルがあってから、ひきこもり状態になった
- 学校を卒業してから、めっきり外出しなくなった
- 人間関係でつらい出来事があった後、家から出なくなった
このような出来事があった場合「これがひきこもりの原因なのかな?」と思う方が多いです。
しかし、それらの出来事は、ひきこもりの“原因”ではなく、“きっかけ”に過ぎない場合が少なくありません。

「ストレスが限界を迎えたタイミングが、たまたまその出来事の時だった」と考えるほうが自然です。
それまでは普通に生活できていたように見える場合でも、本人は長い間、一人でストレスを抱え続けていたのかもしれません。
そのため、何か大きな出来事があったとしても、それだけを「ひきこもりの原因」と決めつけないことが大切だと思います。
ストレスが複数あるケースも
本人が抱えているストレスは、ひとつだけとは限りません。
複数の要因が絡み合い、何が一番の原因なのかわからなくなっているケースも多くあります。
そのため「何が原因なんだろう?」と考えてもなかなか答えが見つからず、もどかしい時間を過ごす方やご家族も少なくないように思います。

私自身も、ひきこもりの原因(=ストレス)を整理し、言葉にできるようになるまでには数年単位の時間がかかりました。
- 「一日でも早く原因を知ってスッキリしたい」
- 「なるべく早く原因を特定して、できる限りの対処をしたい」
そんなふうに思う気持ちは、経験者として痛いほどよくわかります。
しかし、焦りや不安が強い時こそ、立ち止まる勇気も必要だと思います。
絡まった糸をひとつずつほどくように、ゆっくりと時間をかけながら、当事者さまの心と丁寧に向き合ってほしいです。

なぜひきこもりになったのかは、本人もよくわからない
ひきこもり問題を考える時、親御さまや支援者の方に一番知っていただきたいのは、
- なぜひきこもりになったのかは、本人もよくわからないことが多い
ということです。

私も、ひきこもりの真っただ中だった時は、自分の身に何が起きているのかがよくわかりませんでした。
苦しみからなかなか抜け出せないのは、本人自身もひきこもりの原因や理由がわからず、うまく言葉にできないからかもしれません。
だからこそ「なぜ?」と答えを急ぐのではなく、ご本人が安心して自分の体験を見つめ直せる環境を整えることが大切ではないでしょうか。

体調不良は“ストレス放出”の証
ひきこもり状態にある方の中には、腹痛や頭痛、微熱、倦怠感など、さまざまな身体症状に悩まされる方も少なくありません。

私自身も、ひきこもり期間中は、さまざまな体調不良を経験しました。
あくまでも私の場合ですが、
- 何にストレスを感じているのか?
- なぜひきこもりになってしまったのか?
ということを理解できず、うまく言葉にできなかったからこそ、そのモヤモヤが「体調不良」という形であらわれていたのだと思います。
その後私は、自分のひきこもり経験を少しずつ言語化できるようになり、長年悩んでいた腹痛や吐き気が徐々に落ち着いていきました。

もちろん、すべての体調不良がストレスによるものとは限りません。
けれど、心の負担が身体症状としてあらわれることが多いのは、事実だと思います。
もしご本人が何らかの症状に悩んでいる場合は、
- 「体調不良は、心がSOSを出しているサインかもしれない」
という視点を持ちながら、本人の苦しさにそっと寄り添ってほしいと思います。
ストレスを取り除けば、ひきこもりは解決できる?
- ひきこもりの原因となったストレスを取り除けば、元の生活に戻れるのでは?
そう考える方もいるかもしれませんが、私は、それだけで問題が解決するケースは決して多くはないと感じています。
もしも新しい環境で同じようなストレスに遭遇した場合、再度ひきこもりになったり、問題が発生したりする可能性があるからです。

たとえば、ひきこもりのきっかけが「職場の人間関係」だったとしても、その背景には、
- 発達障害によるコミュニケーションの難しさ
- HSPによる刺激の受けやすさ
- 社交不安障害による強い緊張や身体症状
- 完璧主義や自己否定の強さ
など、本人の特性や考え方、性格などが大きく影響しているケースも少なくありません。

私自身も、環境を変えるだけでは根本的解決には至りませんでした。
環境を変えるだけじゃなく、生き方や考え方そのものを見直す必要があったのです。
だからこそ、本当に大切なのはストレスを「取り除くこと」ではなく「理解すること」だと思います。
- 自分にとって何がストレスなのか?
- そのストレスと今後どう付き合っていけば楽に過ごせるのか?
それらについてゆっくりと時間をかけて考えることが、長い目で見た「回復」につながるのではないでしょうか。
私がひきこもりになった5つの理由

ここからは、私自身の体験をもとに、ひきこもりになった理由や原因を6つの項目にわけて紹介します。
「ひきこもりになる背景には、さまざまなストレスが複雑に絡み合っている」ということを、よりリアルに感じていただけると幸いです。
不登校状態から抜け出せられなかった
ひきこもりになった理由としてまず最初に考えられるのは、長年の不登校経験だと思います。

私は中学2年生から不登校になり、高校以降はいろんな学校の入退学を繰り返していました。

そのため、ひきこもりになる随分前から、外に出たり、他人と密なコミュニケーションを取ったりすることに大きな不安がありました。
だからこそ、入退学を繰り返すうちに、
- 「私はどこへ行っても続かないのでは?」
- 「信頼できる人はどこにもいないのでは?」
- 「また失敗するのでは?」
という思いがどんどん積み重なって、学校に行くことだけでなく「社会へ出ること」そのものが怖くなっていきました。
体調不良で外に出ることが難しかった
心身の体調不良や病気(精神障害)も、外に出ることを難しくさせていた理由のひとつだと思います。
- HSP
- 自律神経失調症
- 起立性調節障害
- パニック障害
- 社交不安障害
- 会食恐怖症
- 摂食障害
など、ここには書ききれないほどのさまざまな体調不良に頭を悩まされていました。

会食恐怖症と摂食障害は、大学入学を機に落ち着きましたが、それ以外は今でも症状が出ることがあります。
体調不良によって一番つらく感じたのは、症状そのものではなく「また体調が悪くなったらどうしよう」という不安です。
- 仕事や学校を休んで誰かに迷惑をかけたり、怒られたりするのが怖い
- 周りの人に変な目で見られたり、気を遣われたりするのがつらい
過去のトラウマ体験が影響して、このような不安が強くありました。
そのため「頑張って外に出なければ」という思いはあっても、どうしても一歩踏み出すことができませんでした。

人間関係へのトラウマがあった
他人に対する不信感やトラウマも、一歩を踏み出す勇気に歯止めをかけていたように思います。
- 家族の不仲、関係の悪さ
- 親戚からの無理解
- 幼稚園や小学校などでのいじめ体験
- 友人関係の悪さ、無理解
- 学校教師や塾講師、カウンセラーや医師からの不適切対応
このように、小さな頃からずっと、身近な人との関係で傷ついたり嫌な思いをしたりすることが何度もありました。
そのため、
- 「自分のことを理解してくれる人なんてこの社会にはいない」
- 「どこに行っても、誰と出会っても、どうせまた傷つけられる」
という思いが強く、新しい人と出会ったり、新しい場所へ行ったりすることに大きな不安がありました。
つまり、当時の私にとって「外の世界」は、“誰かに傷つけられて心を壊されるリスクが高い脅威的な場所”だったのです。
今振り返ると、そうやって外に出ることを避けて家にひきこもることで、自分の心が壊されないよう守っていたように思います。

たとえ一人でも、自分の味方になってくれる人や信頼できる人がいれば良かったんでしょうけどね……。

安心して過ごせる場所がなかった
ひきこもりから抜け出すために必要なのは「安心して過ごせる場所」だと思います。
しかし、当時の私は、そのような場所と出会うことができず、ただひたすらに暗闇の中を彷徨うことしかできませんでした。
- 家にいれば傷つくリスクは少ないけれど、両親との関係が悪くて心が休まることがない
- 学校や塾に行っても、乱暴かつ自己中な対応で心を傷つけてる先生しかいなくて苦しい
- 病院に行っても「甘えだ」「吐いてでも外へ出ろ」と言われるだけで、一向に症状が良くならない
- カウンセリングを受けても「このままだと一人だけ線路から脱線する」みたいなことしか言われなくて、何も解決しない
- 誰かに助けてほしいけれど、誰のことも信じられず、どこの誰を頼ればいいかわからない
今振り返ると、このような状況では、ひきこもりから抜け出せなくて当然だったように思います。
もう15年近く前の話ですので、当時関わりがあった方たちを今さら責めるつもりはありません。
けれど、多くの苦しみやしんどさを抱える人に最も必要なのは、
- 「安心して心を休められ、自分を受け入れてくれる人がいる場所」
だということは、ちゃんと理解してほしかったなと思います。

ひきこもりから抜け出せない要因を作っていた「負のスパイラル」については、以前書いたコラム記事にも詳細を綴っています。

やりたいことや目標がなかった
「やりたいことや目標がなかった」ということも、ひきこもりから抜け出せなかった理由のひとつでした。
自分に自信を持てなかったり、他人や社会を信じることが難しかったりした影響で、
- こんな自分になりたい
- こういうことをやってみたい
というような目標を持てず「ひきこもりを脱した先で何をしたいのか」という理想のイメージが何ひとつ持てなかったのです。
だからこそ「これからどうするの?」と周りから聞かれた時は、

やりたいことが何もない状態で、これ以上どうしろって言うの?
と思い、大きな苛立ちを抱えていました。
「やりたいことがあるのに何らかの理由でできない」ことも苦しいですが、おそらく、
- 「やりたいことが何もない」
- 「自分が何をしたいのかよくわからない」
ことの方が、メンタル的にはしんどいと思います。
どうか周囲の方は「やりたいことが見つからない」という本人の苦しみを理解し、今後を聞き出す声掛けは控えてほしいです。

未来に希望を見出せなかった
ひきこもりだった私にとって一番苦しかったのが「未来に希望を持てなかったこと」です。
嫌なことや苦しいこと、悲しいことや理不尽なことがあまりにも多すぎて、
- 生きていて何が楽しいのかわからない
- この先、幸せなことなんて起こらない気がする
- これからもずっとこんな人生が続くんだろうな
というような数々の不安や絶望に心を支配され、前向きな未来を考えることができませんでした。

そんな私がひきこもりから抜け出すことができた一番大きなきっかけは「目標を見つけて未来に希望を見出せたこと」でした。

とあるテレビ番組を観たことがきっかけで将来の夢が見つかり、大学への進学を決めたのです。

何かしらの目標が見つかると、未来への希望を持てるだけでなく、不安や困難に立ち向かう「勇気」も湧いてくるような気がします。
私自身も、目標ができたことで体調不良や人間不信の不安に立ち向かうことができ、それがひきこもり状態からの脱出につながりました。
目標が見つかるタイミングは人それぞれだと思いますが、その日は予期せぬ形で、突然やってきます。
どうか、無理のない範囲で「未来への希望」を信じていてほしいと思います。

まとめ|「こころ」に着目し、当事者が抱える生きづらさを理解する

本記事では、ひきこもりになる原因・メカニズムを踏まえながら「私がひきこもりになった理由」について紹介しました。
ひきこもりの背景には、本人にしかわからないさまざまなストレスや苦しさ、生きづらさが隠れていることが多々あります。
だからこそ、目に見える出来事や本人の行動だけで判断するのではなく、
- 本人はどのようなストレスを抱えているのか
- 外の世界から距離を置きたくなった背景には、どんな葛藤や苦しさが影響しているのか
という“当事者のこころ”に着目し「当事者が抱える生きづらさを理解しよう」という気持ちを持つことが大切ではないでしょうか。
もしも「ひきこもり当事者への関わり方がわからない」と思ったら、まずは「当事者のこころを見て、生きづらさを理解する」ところから始めてほしいと思います。

