これからの「不登校・ひきこもり支援」に必要なものー“選択肢”を増やし、より多くの当事者を救える社会に
皆さんは「不登校・ひきこもり支援」という言葉に触れた時、何を思い浮かべますか。
支援団体の居場所活動。自助グループの当事者会。カウンセリング。行政の相談。医療機関の受診……。
- 不登校やひきこもりになったら、外に出て人と会う“対人支援”を受けなければならない
そんなふうに思っている方はとても多いと思います。
しかし、それらの支援の在り方は、本当に不登校・ひきこもり当事者に寄り添うことができているのでしょうか。
今回の記事では「今後の不登校・ひきこもり支援に必要なもの」について、私なりの見解をお話します。
支援活動に携わっている方や、不登校・ひきこもり当事者をサポートしている方はぜひご一読ください。
現在の不登校・ひきこもり支援に対する違和感

まずは、私自身の不登校・ひきこもり体験や「たんぽぽの栞」の活動を振り返りながら、現在の不登校・ひきこもり支援への違和感を整理したいと思います。
外に出て人と会わなければ、支援を頼れない
2024年の6月に事業を立ち上げてから、支援団体や支援機関と連携し、不登校・ひきこもり支援に関するさまざまな活動をおこなってきました。

たんぽぽの栞は、講演や居場所活動などを目的に立ち上げた事業ではないため、思わぬ形で活動の幅が広がり、たくさんの刺激を受けました。
しかし、不登校・ひきこもり経験者として多くの活動をおこなう中で、私は徐々に「大きな違和感」を抱くようになりました。
それは、不登校・ひきこもり当事者の方への支援が、
- 外に出て、相談員や支援者と話す
- どこかの居場所や当事者会、講演会に行き、交流の場を持つ
というような“外出必須の対人支援”が当たり前となっていることです。
不登校やひきこもり当事者の中には、外に出る気力がない方や、対人関係への強い恐怖を感じている方も少なくありません。
それにもかかわらず、外に出て人と会わないと支援を受けることが難しい現在の支援体制は、当事者の方へのサポート体制として不十分ではないかと感じるようになりました。

支援で傷つき、思うように頼れなかった過去
- 外に出て、問題なく他者コミュニケーションが取れるしか支援を受けられない現状は、本当に当事者のためになっているのだろうか?
この考えの土台にあるのは、私自身が不登校・ひきこもりだった時に感じていた「孤独」や「悲しみ」です。
私が不登校・ひきこもりだった10代の頃、体調不良や人間不信が今以上に強くありました。
そのため、支援団体や相談機関などに行き、人と会って話をする勇気はありませんでした。

唯一行けたのは、在籍していた中学・高校のカウンセリングルームと、自宅から徒歩圏内にある病院(心療内科)への通院のみです。
しかし、カウンセリングも通院も、心のトラウマを刺激されて体調不良や人間不信が強くなったたため、途中で行かなくなりました。

体調が悪かったのは事実ですが「無理に支援を頼らない方が幸せでいられたかもしれない……」という思いは、大人になった今でも消えません。
「支援すら頼れない私は、生きている価値なんてない」
不登校・ひきこもりだった頃の私の心境は、こんな感じでした。
色んなことがしんどい
↓
何か支援を受けないといけないのだろうけど、外に出るのも、人に会うのもしんどい
↓
でも、今の状態から抜け出すためには、支援を受ける以外にどんな手段があるのかわからない
↓
勇気を出して外に出て、支援を受ける
↓
支援者に傷つけられ、トラウマが再燃
↓
「もう誰とも関わりたくないし、外にも出たくない」
↓
色んなことがしんどい(振り出しに戻る)
という感じで、何度も同じことを繰り返して“負のスパイラル”に陥ってしまい、まるで出口のないトンネルの中にいるようでした。
しかし、不登校・ひきこもりの支援活動をしている方たちの大半は「外に出て問題なくコミュニケーションが取れる人」のことしか見ていません。
そのため、自宅で孤独に過ごす私の存在には気づいてもらえず、より孤独が強まる一方でした。

普通の支援すら頼れず、誰にも存在を気づいてもらえない自分には、生きている意味なんてないのかもしれない……。
そんなふうに思ってしまうことも、少なくありませんでした。

対人支援を受けられなかった私が救われたもの
そんな私が救われたのは、
- 私と同じ経験をし、同じ道を通ってきた人たちが紡ぐ言葉の数々
でした。
不登校・ひきこもりの経験者や当事者の方たちが書いたネット記事やブログ、SNS投稿や書籍に触れて、

苦しいのは私だけじゃないんだ。
私と同じように悩み、もがき苦しみながら生きている人は、この世界にたくさんいるんだ……。
ということを、生まれて初めて知ったのです。
たくさんの孤独や虚しさを一人で抱えながら生きていた私は、その方たちの優しさに触れて、
- 「苦しみを分かってくれる同志=味方」
を見つけた気持ちになりました。
そして徐々に「もうちょっとこの世界で頑張ってみようかな……」と思えるようになったのです。

この時の体験があったからこそ、今の私は「たんぽぽの栞」の発信活動ができているのだと思います。
経験者として、現状の支援体制に「やるせなさ」を抱く
- 支援を頼りたいけれど、外に出て人と会うことができないから、どうしようもない……
そのような気持ちを抱えながら、過去の私のように一人で孤独を抱えている不登校・ひきこもりの方は、きっと私たちが知らないだけでたくさんいらっしゃると思います。
しかし、講演や居場所活動などを通じて出会った支援者の方々を見ていると、
- 既存の支援を増やしたり、盛り上げたり、多くの方に知ってもらったりするためにはどうしたらいいか?
というテーマのみに注目している方ばかりでした。つまり、
- 外に出て人と会うことが難しい当事者の存在に目を向け、その方々が安心して頼れる支援のアプローチ
について考えてくれている人が、ほとんどいない状態だったのです。
正直、不登校・ひきこもりの経験者として、大きな違和感とやるせなさを抱かざるを得ませんでした。

これからの不登校・ひきこもり支援に欠かせないオンラインツール

それでは、不登校・ひきこもり支援は、これからどう変わるべきなのでしょうか。
この章では、新たな支援のアプローチ方法として「オンラインツールの利用」について掘り下げたいと思います。
外出不安や対人恐怖がある方でも取っつきやすい
不登校・ひきこもりを経験して学んだことはいろいろありますが、“支援”に関することで一番大きかった学びは、
- 無理に外へ出たり、人と会ったりしなくても、家にいながら前を向くきっかけを見つけることはできる
ということでした。
少し前までは「外に出て人と会う」ことでしか情報を得られなかったかもしれません。
けれど今は、スマホやパソコンがあれば何だってできますし“無料で”たくさんの情報を集めることができます。
そのような時代の変化は、自宅を出づらい不登校・ひきこもり当事者の方々にとっての“追い風”になり得ると思います。
- ブログやSNSを見る
- 動画やテレビ番組を視聴する
- オンラインで誰かと話をする
スマホやパソコンを使ったこれらのオンラインツールは、外に出たり、対面での関わりが難しかったりする方でも比較的取っつきやすいです。

前章で述べたとおり、私自身も、オンラインツールを利用したからこそ前を向くことができた経験があります。
そのような“取っつきやすさ”が当事者の方にポジティブな変化を与え、人生を変える「きっかけ」を見つけられる可能性も十分あるのではないでしょうか。

“支援”へのハードルを下げることができる
また、オンラインツールには「支援へのハードルを下げることができる」という利点もあります。
「講演」「当事者交流会」などの支援活動は、対面でおこなわれることが多いです。
そのため、人との触れ合いや移動、体調への負担など、多くのハードルをクリアしないと参加することができません。
しかし、オンライン開催の場合、
- 顔出しをしなくていい
- 途中参加や途中退出がしやすい
- 合わない場合でも、簡単に距離を取れる
- 体調負担・金銭負担が少ない
というメリットがあり、対面開催と比べて少しだけ参加へのハードルが下がるような気がします。
現在の不登校・ひきこもりに関する支援活動は、対面開催のものが大半を占めています。
コロナ禍の影響により、ここ数年でオンライン開催のものも増えてはいますが、行政や支援団体が主催しているものはほとんど対面開催です。
そのような状況を客観的に見た時に、
- ひとつくらいは、オンライン開催の活動があってもいいのでは?
と思うようになりました。

この4月から、講演などの活動をオンラインのみに限定させていただいたのは、そのような思いが芽生えたからです。

ご家族にとっても、気軽に頼れる支援を
「オンライン支援は気軽に参加できる」というメリットは、当事者を支えるご家族にも当てはまると思います。
対面開催のイベント活動だと、
- 知り合いに会うのが怖い
- 会場まで足を運ぶ余裕がない
- 時間や費用の負担が大きい
という理由で、活動に興味があっても参加をためらう方も少なくないと思います。
しかしオンライン開催であれば、そのような負担を軽減できるため、これまで届かなかった方にも人とのつながりや情報を届けられる可能性があります。
「ご家族にとっても負担が少ない形を選ぶ」という視点も、これからの不登校・ひきこもり支援に必要なものではないでしょうか。

当事者や経験者の声を、より多くの方に届けられる
私がオンラインツールの必要性を主張する理由は、もう一つあります。それが、
- 当事者や経験者の声を、より多くの方に、スムーズに届けられる体制を整えたい
という、不登校・ひきこもりの経験者ならではの“切実な想い”です。
もし今後、私のように「自分の思いや体験を発信したい」と考える当事者や経験者の方が出てきた場合、
- 対面で話すのはハードルが高いけど、オンラインだったらできるかも
と感じる方も多いのではないかと思います。
そのような方々がなるべく負担のない形で発信活動をできるように、ほんの少し先を歩いている私が、その土台を作れたらいいなと思っています。

不登校やひきこもりは、経験した人間にしかわからない苦悩や葛藤がたくさんあります。
だからこそ、当事者や経験者のリアルな思いは、積極的に社会へ発信していくべきだと考えています。
そのための手段としてオンラインを活用することは、これからの不登校・ひきこもり支援をより良くする“第一歩”になるのではないでしょうか。
大切なのは「選択肢を増やす」こと

「オンラインツールの必要性」に加え、もうひとつ、今後の不登校・ひきこもり支援において大切にすべきだと感じることがあります。
それは「支援の選択肢を増やすことの重要性」です。
現在の支援体制だけでは、救い切れない当事者がいる
私がオンラインツールの必要性を主張をすると、周囲の支援者の方から、
- 「対人支援に救われている人、必要としている人は確かにいる」
- 「それを『なくせ』と言うのはおかしいのでは?」
ということをよく言われます。
しかし私は「今ある対人支援をなくすべき」とは一言も言っていません。
私自身も、この数年でいろいろな支援活動をおこなってきましたので、対人支援の存在に救われている当事者の方がいるのはよく知っています。
だからこそ、無理に対人支援をなくして選択肢を減らす必要はないと思います。

ただ、さまざまな支援活動を通じて「対人支援の需要」を実感したのと同時に、
- 今ある対人支援だけでは、本当に支援を必要としている方に十分なサポートを届けられていないのではないか?
ということを強く実感したのも事実です。
私は、不登校・ひきこもり経験者として、その違和感を見過ごしたくありません。
支援活動を頼れない当事者に思いを馳せる
支援活動をする中で、参加者の方が喜んでくれたり、笑顔になってくれたりすると、
- 「自分たちの活動には意味がある」
- 「一人でも多くの当事者を救うために、これからも活動を頑張らないといけない」
と感じるのは、支援者として当たり前の感情だと思います。

私自身も、講演や居場所活動を通じてたくさんの方の笑顔に触れ、大きなやりがいを感じました。
けれど、そのような支援活動をしていると、良くも悪くも、そこに来る参加者の方々しか見ることができません。
それ自体は決して悪い事ではないと思いますし、目の前の参加者をサポートしないことには何も始まらないのは確かだと思います。
でも、その裏には、
- 活動が気になっているけれど、体調が優れず行けない方
- 対人不安が強く、参加する勇気を持てない方
- 現在の不登校・ひきこもり支援に抵抗がある方
- 支援の情報を手に入れることができず、一人で悶々としている方
など、何らかの理由で支援につながれない当事者の方もたくさんいると思います。
- そのような方々に思いを馳せることなく「自分たちの活動には意味がある!」という気持ちだけで支援をおこなうことは、支援の在り方として正しいものなのか?
- ひとつの選択肢(対人支援)に固執し、それ以外の選択肢を受け入れない考え方は、本当に不登校・ひきこもり当事者の幸せに繋がっているのか?
- これらの思いや活動体制は、本当の意味で「不登校・ひきこもり当事者の心に寄り添っている」と言えるのか?
これが、不登校・ひきこもり支援者をおこなう方たちに投げかけたい“私の問い”です。

時代の変化をくみ取り、新しい選択肢を「増やす」
先ほども述べた通り、少し前までの社会は、外に出て人と会い「直接的に何かをする」ことが当たり前でした。
それはつまり、ひとつの手段しか選べず、ほかの選択肢がない時代だったと言っても過言ではないように思います。
しかし現在は、そのような時代ではありません。
- 複数の手段や選択肢の中から、自分に合うものを自由に選ぶ
このように、自分の性格や個性、得意分野に合った生き方を選ぶことがスタンダードになりつつあるように思います。
わかりやすい例をいくつか挙げてみましょう。
- 子どもの学び場・手段
⇒昔は「学校」が主流だったのに、現在は通信制高校やフリースクール、オンライン学習などが増えている
- 働き方
⇒昔は「正社員」が主流だったのに、現在はリモートワークやスキマバイト、ブログやSNSを使ったオンラインビジネスなどが増えている
- 診察・カウンセリング
⇒昔は「対面」が主流だったのに、現在はオンライン診療やオンラインカウンセリング、電話相談、チャット相談などが増えている
- 情報収集方法
⇒昔は「テレビ・ラジオ・新聞」が主流だったのに、現在はX、Instagram、Facebook、YouTube、ポッドキャスト、ネット番組などが増えている

生活面の変化だと、現金以外の支払い方法の誕生や、ネット通販やフリマアプリの増加なども挙げられます。
つまり、時代の変化によって「たったひとつの正解・当たり前」が崩壊し、
- 「自分に合うものを好きに選べる自由」が、社会全体に認められつつある
と感じますし、そのような「選択の自由」を楽しむことこそが、令和の新しい生き方になっているようにも思います。
それにもかかわらず、不登校・ひきこもり支援の選択肢は“対人支援”のみに偏っており、ほかの方法や手段を選ぶことがとても難しいです。
そのような現状は、はっきり言って“時代遅れ”だと感じます。

なんだか、不登校・ひきこもり支援界隈だけ、時代が止まっているように思える瞬間が多々あります。
私たちが求めるものや「生きるための手段」は常に一定ではなく、刻一刻と変化しています。
不登校・ひきこもり支援も、そのような時代の変化を丁寧に汲み取り、いろいろな“手段”を選べるように方向転換をするべきだと思います。
そのような方向転換こそが、より多くの不登校・ひきこもり当事者やご家族を救うための“第一歩”になるのではないでしょうか。

まとめ|支援の選択肢を増やし、より多くの当事者を救える社会に

本記事では、不登校・ひきこもり経験者の立場から、現在の支援に関する違和感や今後の展望をお話させていただきました。
不登校やひきこもりに悩む方は年々増え続けており、その状態が長期化している方も少なくありません。
こうした状況は、時代の変化によって「対人支援」だけでは救いきれない当事者の方が増えていることを示しているようにも感じます。
- 「支援=外に出て人と会わないと受けられないもの」
このような前提が当たり前になっているのは「外に出て人と会えない当事者の方の存在が、社会にほとんど知られていないから」だと推測します。
だからこそ私は、経験者の立場から、
- 対人支援だけでは救い切れていない、不登校・ひきこもり当事者の方もいる
- 時代の変化に合った新たな支援体制を整えることで、これまでの支援では救いきれなかった方を救える可能性がある
ということを、ブログでの発信や講演活動を通じ、より多くの方に伝えていきたいと思っています。
私の活動を通じて、一人でも多くの方が「目に見えない当事者の存在」に思いを馳せ、時代の変化に合った方向転換の必要性を理解してくださることを心より願っています。


